初谷和行

第55回となる解釈学会全国大会が、八月十九日(土)、二十日(日)に茨城大学水戸キャンパスにて開催された。令和二年度は中止、令和三年度・四年度はオンライン開催であったため、四年ぶりの対面での全国大会である。一日目は研究発表および公開講演、二日目は実地踏査という、オンライン前のプログラムで行われ、全国から五〇名以上の研究者が参集した。

一日目はまず、文学・国語学を中心とした第一会場と、国語教育を中心とした第二会場に分かれての研究発表が行われた。私自身は第二会場を中心に研究発表に参加したが、教育実践に関わる研究、文学理論に関わる研究、教科書や教材に関わる研究など多岐にわたる研究から学ぶことができた。第一会場においても、研究発表後の休み時間や昼休みにも発表に関して情報交換や質疑、議論などがなされていた。このように、どちらの会場でも学びの多い研究発表が行われ、活発な質疑応答がなされた。

研究発表のあとには、茨城大学名誉教授である橋浦洋志先生をお招きして、「小説における〈語り手〉と〈書き手〉」を演題とした公開講演が行われた。W.J.オング『声の文化と文字の文化』にある〈声〉の特徴や他の文学研究者・文学者の言を踏まえながら、近代文学作品を「語り」・「書き手」、あるいは「語り」・「文字」の観点から分析した内容が述べられた。また、〈声〉と〈文字〉の問題はユダヤ教信仰やキリスト教信仰にまで遡ることができるとの言及もあった。分析方法や分析の緻密さ、研究の視点の幅広さに感銘を受け、大いに学ぶことができた。最後に対面下では初めてとなる柳田忠則会長のご挨拶により会は閉じられた。

大会終了後は水戸駅前のホテルテラスザガーデン水戸にて懇親会が行われた。四年ぶりの懇親会、交流を深めるにつれ対面の良さをしみじみと感じることができた。

二日目の実地踏査についてもオンライン大会では開催できなかったことである。水戸学の生まれた地において、配布された資料に基づいて参加者それぞれが精力的に実地踏査を行ったことと推察される。

久しぶりの対面での大会、非常に充実したものとなった。

なお、次年度は武蔵野大学での開催を予定している。

(はつがい・かずゆき/武蔵野大学)